文ッ字(もっじ)フリマレポート

昨日、「町田市民文学館-ことばらんど」で開催された「文ッ字フリマ2024」において、当サイトの執筆者である詩人・高木弥生氏が、「詩の手紙」と称して、詩集ならぬ手紙を販売した。
今回はその様子をレポートしたい。

詩の手紙看板一般客は午前10時から、会場に入場できる。
このイベントの詳細はコチラをご覧いただくとして、 まずはこのフリーマーケットの特徴を述べると、実に変わったことに、町田市民文学館の企画であるにもかかわらず、文学フリマではない。
出店者も来客も、ほぼタイポグラフィに関心のある人が中心で、厳密な線引は曖昧であるが、ようするにただ同人誌や自作の詩集を販売する目的なら、出店の審査は通らないようだ。

さて、高木氏のブースは3階にあった。3フロアで50を超える団体・個人がブースを作っている中、高木氏のブースは実にシンプルである。
無数の手紙が封筒に入れられて、封をされて並べられている。
封筒には意味深な言葉が、いろいろな形のフォントで印刷されている。封筒の色や模様も様々だ。来客はこの中から、自分に宛てられたと感じる手紙を買う。
一通・三百円という安いのか高いのかわからない値段。封筒には高木氏の詩が一編入っている。どの封筒にもそれぞれ別の詩が入っているのだが、封筒に書かれた言葉が同じ封筒だからといって、同じ詩が入っているとは限らない。勿論、二通以上買えば中身の詩がダブってしまう場合もあるわけで、買う人は相当のチャレンジャーだろう。
しかしどうやら、高木氏のほうで、どの封筒にどの詩を入れたかはだいたいわかっているようで、重複したものを選ぶと、注意してくれるようだ。

詩集をバラ売りしているようにも思える。一体このような手紙の販売は、どれだけ買っていく人がいるのだろう?
週刊文学文芸は、静かに見守った。

詩の手紙封筒最初の30分は、来客は一瞥して去っていった。やはり怪しげに見えるのだろうか?
向かいのデザイナーのデザインブックは、ちょっとネット上で有名な人らしく、数千円するデザインブックがあれよあれよと言う間に、飛ぶように売れている。係員がついて最後尾まで誘導し、3階から1階の入り口付近まで、階段をねって長蛇の列ができていた。
この人は山積みされたデザインブックを午前中で完売し、お昼を過ぎるともう引き払っていた。
他のブースも、ちょこちょことは売れている。やはり「詩の手紙」を売るというのは時代が早すぎたか。

と思いきや、10時半頃から、少しづつ「詩の手紙」が売れはじめた!
「面白い」と思ってくれる人がいたのだろう。
それから午後にかけて、だんだんと売れ出し、4通まとめて買う人も現れた。編集長はちょっと驚きを隠せなかった。
挙げ句、午後4時のラストまで、20通近く売れたのではないだろうか? 正確には数えていない。

見知らぬ人が見知らぬ詩人の書いた手紙を、自分に宛てたように思い買っていく。
そんな不思議な光景が、眼の前にあった。

さて、詩を手紙として売るというこのアクションは、今後どのように世界に浸透して行くのだろう。ちょっと楽しみである。

2024年3月31日 週刊文学文芸編集長 記